出産は人生の一大イベント。その土地ならではの習慣や制度が,驚きや発見をもたらします。今回は,ドイツで2度出産を経験した筆者が,日本の常識とは大きく異なる5つのポイントを紹介します。
目次
新生児を産湯に入れない
以前,紹介しましたが,ドイツでの出産・子育てで一番驚いたのが「臍の緒が取れるまでは沐浴しない」こと。産院で産湯にも入れないため,臍の緒が取れるまでの1-2週間,赤ちゃんは胎脂や血がついたままの状態で過ごします。
日本では「ドライテクニック」と呼ばれ,近年一部の病院で取り入れられていますが,欧米では一般的な方法です。最初は「清潔じゃない!」と抵抗がありましたが,慣れると意外にも便利。特にワンオペ育児の日は,「今日は子供をお風呂に入れなくてもいいや」というだけで,気持ちに余裕が生まれました。
ドライテクニックには感染リスクの低減や保温効果,胎脂による皮膚の保護などの利点があります。一方で,「清潔感がない」と感じる点や,髪に血の塊が絡まるなどのデメリットも。
臍の緒が取れた後も,ドイツでは週1回程度の入浴が一般的。これは硬水の影響で皮膚が乾燥しやすいためです。文化の違いに戸惑いつつも,「赤ちゃんはそんなに汚れない」と実感し,毎日の入浴が必須ではないことに気づきました。
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産後2泊3日で退院
経膣分娩で特に問題がなければ,ドイツでは出産後2泊3日で退院が基本。生後2日目には小児科医のチェックが入り,母子ともに健康であればすぐに自宅へ帰ることができます。
日本の産院では,授乳指導や沐浴指導が行われることが一般的ですが,ドイツでは院内での指導はほとんどありません。その代わり,訪問助産師(ヘバメ)が生後2週間ほど毎日自宅まで訪れ,母子の状態をチェックしながらケアや相談に乗ってくれる制度があります。この手厚い訪問ケアのおかげで,病院は「出産する場所」としての役割に特化できるのです。
第一子出産時は,わずか2泊3日での退院に驚きましたが,それ以上に驚いたのは病院食の内容でした。
病院食がとにかくシンプル
ドイツの伝統的な食文化には「Kaltes Essen(冷たい食事)」というものがあります。朝食と夕食は基本的に火を使わないシンプルな内容で,病院食も例外ではありません。

日本で出産後の病院食といえば,栄養バランスが取れた温かい料理が提供されるイメージ。しかし,ドイツの病院では朝・晩はパンやチーズ,ハムが中心の冷たい食事。昼食のみ温かい料理が出ますが,味は大雑把で,日本の繊細な味付けに慣れている身にはキツいものがありました。

自宅では和食を中心に食事を作っているため,冷たいパン食が続くと,無性に日本の食事が恋しくなります。夫や日本からヘルプに来てくれていた母に,おにぎりやお味噌汁の差し入れを持ってきてもらいました。2泊3日の入院が限界だったのは,食事の影響も大きかったかもしれません。
産褥ショーツのシンプルさ
病室の棚にはネット状のショーツと分厚いパッドが山積みになっており,これをセットして履くのがドイツ流。初めて見たときは,「どう使うの?」「こんなに頼りなくて大丈夫?」と不安になりましたが,実際に使ってみると意外と快適でした。

破水から出産が始まる場合や,産後すぐの悪露の量が多い時期には,汚れたらすぐに捨てられるのが利点。洗う手間もなく,清潔さが保たれます。ただし,着用した姿はなんともユーモラスで,初めて鏡を見たときは思わず笑ってしまいました。
陣痛促進カクテル,何で割る?
ドイツでは「自然な出産」が重視され,2度目の出産が破水から始まった私は,陣痛促進剤の点滴を使う前に,まずはヒマシ油入りのスムージーを飲みました。その名も「Wehencocktail(陣痛カクテル)」。
看護師に「何で割る?」と聞かれ,選択肢を聞き驚きました。各種ジュース(リンゴ,オレンジ,クランベリー等),発泡ワイン,ノンアルコール発泡ワイン。
「発泡ワイン?!」と一瞬ギョッとしましたが,怖気づいてノンアルコールを選択。

スムージーの味はナッツ風味で,そこまで不味くはないものの,量がとにかく多い!ジャーにたっぷりと注がれたスムージーは,なかなか減らず,飲み干すのに一苦労でした。
後になって気づいたのは,「発泡ワイン」を選んだ方が正解だったかもしれないということ。アルコールには利尿作用があるため,大量に飲まなくてはいけない時の助けになった可能性があります。が,時すでに遅し……。
飲み終えた数時間後にはマイルドに陣痛が促進されました。結局,効きが弱くて陣痛がおさまってしまったため,翌日陣痛促進剤の点滴をし,無事出産にいたりました。
おわりに
日本とは大きく異なるドイツの出産文化。ドライテクニック,病院の滞在期間の短さ,シンプルな病院食,実用的な産褥ショーツ,そしてユニークな陣痛促進法——どれも驚きの連続でしたが,新たな発見と学びの連続でした。もしドイツでの出産を考えている方がいたら,ぜひ心の準備をしておくとよいかもしれません。
【ドイツ産院での体験談】
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