「出産の痛みを経験したほうが赤ちゃんに愛情が湧く」という話,日本人なら1度は耳にしたことがあると思います。でも,麻酔なしの出産も麻酔ありの出産も経験したうえで私が断言するのは「そんなのウソ!」
むしろ,無痛分娩のほうが体力を温存できる分,出産直後から赤ちゃんに対する愛情を抱きやすいのではないかと感じています。
「自然分娩のほうが愛情が深い」といった言葉に惑わされず,妊婦さんが自分にとってベストな選択をできるよう,少しでも参考になればと思います。
目次
痛みで愛情がわくはウソ
実際に医学論文のプラットフォームであるPubmedで調べてみても,「愛情が痛みを和らげる」という研究はあるものの,「痛みを経験すると愛情が湧く」といったデータは見当たりません。つまり,「出産の痛みを経験してこそ愛情が湧く」という言い伝えに医学的な根拠はないのです。
極度の痛みに耐え続けると心身が極限に。自己にしか意識が向かなくなる
出産の痛みは「鼻の穴からスイカを出す」や「ダンプカーにひかれる」と表現されることがあるほど強烈です。私の場合,陣痛が始まってから37時間ものあいだ痛みに耐えることになりましたが,これほどの痛みが長時間続くと,精神的にも肉体的にも極度に疲労します。痛みと疲労には深いつながりがあり,一般的に極度に疲労すると
- めまい
- 不眠
- 頭痛
- 短期記憶障害
- 体力・精神力の欠如
- 思考困難
等の症状を引き起こすことがあります。このような状況下では自己に意識を向けることで精一杯になり,周りを構っている余裕なんてなくなるのが正直なところです。
産後の体力温存のために無痛分娩は有効
産後が平常時と大きく異なるのは,赤ちゃんが外の世界に出てきてしまったら,待ったなしでお世話が始まるという点です。自分のリカバリーを待つ暇はありません。そのため,母親の体力をどれだけ残して出産を乗り切れるかが重要になります。さらに,産後はホルモンの変化に伴う不安定さや不眠,授乳の疲れも重なるため,無痛分娩によって体力が温存されていれば,赤ちゃんに対してもより優しい気持ちで接することができるのではないかと思います。
無痛分娩のリスクと選択について
無痛分娩で使用される硬膜外麻酔下では,分娩時間が長引く,吸引分娩や鉗子分娩が増える可能性がある,また痛みがキーとなる異常のサインを見逃す可能性があるなどのリスクがあることを理解しておく必要があります。また,麻酔の対応が可能かどうかは産院によって異なるため,選択には事前の確認が重要です。リスクをよく調べて判断した上で,無痛分娩を希望するかどうかは判断してください。
【体験談】1回目の出産で無痛分娩希望を伝えなかった結果…
第一子の出産時,無痛分娩には興味があったものの,「自然分娩の痛みも経験してみたい」という気持ちもあり,助産師さんに「麻酔なしで頑張ってみて,どうしても無理だったら無痛にしていいですか?」と相談しました。助産師さんも「もちろんOKですよ」と言ってくださり,気軽に構えていました。
ところが,大学病院に行っても「子宮口が十分に開いていないから」と家に2回も戻されることに。片道15分の道を3往復するあいだ,舗装の悪い道の振動で陣痛が誘発され,移動中の痛みと疲労で嘔吐もしました。この経験は後々までトラウマとなり,無痛分娩を希望しなかったことを強く後悔しました。
分娩中も痛みに耐えることで精一杯で,力加減など気にする余裕もなく,結果として私の会陰はズタズタに裂けました。笑気麻酔で30分以上も縫われ,会陰裂傷が治癒するまで2か月以上かかりました。
第二子出産での無痛分娩体験:回復が速く愛情も深まる
こうした教訓から,第二子の出産では迷わず無痛分娩を選択。痛みが少ないぶん体力消耗が抑えられ,出産後の体力と回復の速さが全然違いました。また,痛みが少ないことで力のコントロールが効きやすく,結果として会陰へのダメージもほとんどなく済みました。体力が残っているおかげで,出産直後から愛情を持って赤ちゃんに接することができ,心身ともに余裕を持った出産経験ができたのです。
おわりに
自然分娩も無痛分娩も両方経験して感じたのは,「出産の痛み=愛情」という呪いの言葉に惑わされる必要はないということ。妊婦さんがどのような形で産むか,誰にも茶々を入れられることなく自由に選択できれる未来を願います。







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