ドイツでは年間20-30日ほどの有給休暇をほぼ使い切るのが一般的です。定期的に休暇を取ってリフレッシュするからこそ,仕事に全力を注げるという考え方が根付いているようです。日本からドイツに来た当初は「そんなに休むの?!」と大きなカルチャーショックを受けました。
最初の年は,日本での働き方が身に付いていたため,有給休暇を1/3程度しか消化できませんでした。しかし今では,休暇を取ってリフレッシュすることに対する抵抗感が大きく下がり,年末年始に3-4週間の一時帰国,夏休みに2週間ほど,さらに小旅行を組み合わせるなど,有給休暇を活用するようになりました。最近も,夫の出張終わりの日程に合わせて,出張先に子供達と行き,家族で3泊4日の小旅行を楽しんだばかりです。
なぜドイツ人は有給をこんなに使い切れるのか?それは,それを可能にする社会システムや周囲からの同調圧力のなさ,そして権利を大切にする国民性によるものだと感じています。
目次
ドイツでは有給休暇と病気休暇(有給)が別枠
日本では病気になった時のために,有給を取っておくのがメジャーと聞きました。
しかしドイツでは,病気休暇は有給とは別枠で保証されています。医師の診断書を企業側に提出すれば,欠勤扱いにはならず,給与も支給されます。このため,有給休暇は純粋にリフレッシュのために使えます。
ドイツの病気休暇は自分用と子供用が別枠
特に子育て中の家庭にとって,有給休暇と病気休暇が別枠であることは非常に助かります。保育園では頻繁にCovid,下痢・嘔吐,手足口病,結膜炎といった感染症が流行し,子供たちはしばしば登園禁止になるからです。ありがたいことに,うちの子供たちは体調を崩しにくい方ですが,保育園に通い始めた最初の1年は呼び出しが頻繁でした。どの家庭でも最初の1年は試練の時期だと思います。
ドイツでは,自分の病気休暇とは別に,子供を看病するための病気休暇も保証されています。子供が病気の時にはこの休暇を利用するので,有給休暇を消費する心配がありません。仕事が遅れるストレスはありますが,このシステムは大きな助けとなっています。
休暇を取らない学生生活を過ごしてきた私たち夫婦
私たち夫婦が所属する研究所では,ヨーロッパ出身の同僚たちが年間30日(前年度からの持ち越しで最大45日)の有給をほぼすべて消化します。これは私たちにとって大きなカルチャーショックでした。というのも,私たちが過ごした日本の理系大学院での学生生活とは180度違うものだったからです。
夫は特に熱心なタイプで,1年のうち364日は研究室にいるような人でした。学生は大学側との雇用関係がないため,休暇日数の規定がありません。学生に休暇日数の規定がないことで,逆に休暇をとりにくい構造になっていたと思います。休みは体調不良時を除いて授業やセミナーのない夏休み・年末年始・春休みの期間に数日間取る程度でした。研究室のスタッフでさえも,お盆や年末年始に帰省をする程度で,週末も研究室にいる方が多かったです。日本の大学院時代は,社畜の友達の方が旅行に行っているのではと思えるほどに,平日・週末を問わず研究室にいました。研究室の文化や学術分野全体に、「研究者たるものずっと研究にいそしむべきだ」という暗黙の同調圧力が働いていたように思います。当時は研究が楽しく、子供もいなかったので特に不満は感じていませんでした。子育て中のいま,当時の状況に戻れと言われたらゾッとしますが。
また,日本とドイツの大学院生では,金銭面でも大きな差があります。ドイツの大学院生は,アルバイトをしなくても生活できる給料が支給されますが,これは教育システムの違いに起因しています。ドイツでは小学校4年生までの成績で,早々にホワイトカラーコースかブルーカラーコースかにふるい分けされ,ホワイトカラーコースに残れた少数の上位成績者のみがギムナジウム(日本の中高一貫校に相当)に進学可能です。大学が無償,大学院の学生で給料が支払われるのは,万人が大学まで進学できるわけではないからこそ可能なのだと思います。
一方,日本では多くの人が進学することができるため,学生は基本的に無給であり,大学・大学院生の生活は経済的に厳しいことが多いです。博士課程に残る者は,みんな日本学術振興会の特別研究員になることを目指します。特別研究員になれれば(私の学生時代で)月20万円の給与がいただけたので,ドイツの学生と同程度の生活はできます。しかしながら,特別研究員の狭き門を通ることは容易ではないので,大半の学生が常に金欠で小旅行に行くような余裕はないと理解してください。
金銭的な問題や,ずっと研究室にいる理系学生特有の文化を経験してきた私たち夫婦にとって,どれほど有給休暇を全て消費するヨーロッパ人の働き方が大きなカルチャーショックだったかを理解していただけたかと思います。
祝日が平日の中間にある場合「ブリッジ」するのが一般的
日本ではハッピーマンデー制度によって祝日が月曜日に設定されることが多いですが,ドイツでは祝日は日付で定められており,週の真ん中に当たることもあります。多くの人がこのような時に有給休暇を使って連休を作ります。このことを「休みをブリッジする」と呼びます。
会社によっては,火・水・木曜に祝日があるときにブリッジしてクローズしてしまうところもあります。

近所にある会社は,火・水・木に祝日に当たるときは,毎回ドアのところに休みをブリッジする旨を示す張り紙が掲載されます。
子供たちが通う保育園も,年3回ほど先生たちが休暇をブリッジできるように閉園しています。直近の10月3日(木)が祝日だったので,6日(日)までの4日間お休みになりました。保護者もこのような休み方を理解しており,先生たちがリフレッシュすることにも寛容です。

連休中は,自宅でのんびり過ごしたり,帰省をしたり,近場への小旅行だったり,各々リフレッシュに使います。ドイツ人の友達に過ごし方を聞くと,キャンプやハイキングに出かけることが多いようです。私も,ドイツに来てから自然の中で過ごすことが格段に増えました。木々の中を散歩するときに感じる空気のおいしさや,鳥たちのさえずりが,いかに心の栄養になるかを体感しています。
ちなみに,祝日と日曜日は一部のカフェやレストラン以外全て閉まります。スーパーマーケットやドラッグストアといった生活必需品を売っているお店ですら営業していません。しかし,それでも社会は回り,みんなが休む日があっても問題ないと感じるようになりました。
在独7年目の現在,祝日・日曜日の朝,人の気配は感じるものの,街がとても静かな状態がたまらなく好きです。







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