ピルには避妊手段としての役割だけでなく,PMSの治療,更年期障害の症状緩和,さらには卵子の温存など,さまざまな使い方があります。しかし,日本ではまだピル服用が十分に普及しておらず,「ピル=太る」などの誤った噂が広まっていたり,種類が多すぎてどれを選ぶべきか迷ってしまう人もいるかもしれません。本記事がそうした悩みを解決し,適切な選択を支援する一助となれば幸いです。
きっかけ:ピル服用と避妊
学生の頃,恋人との愛情表現としてセックスをすることには賛成派でした。しかし,避妊方法としてコンドームを使うことには常にちょっとした緊張感が伴っていました。次の生理がくるまで毎回ドキドキ…
ピルを飲み始めたのは,避妊の不安から解放されるためでした。これが私が最初にピルを選んだきっかけです。ピルを服用することで自分の体をコントロールできるようになり,精神的にも楽になりました。
もちろん,ピルだけでは性感染症を防ぐことはできないため,セックスの際にはコンドームと併用し,自分の体を守りました。本記事では,避妊目的でピルを服用していた私が,やがて将来の妊娠を考えてピルを続けるようになった経緯についてお話しします。
卵子のライフサイクル: 月間排卵と生理
女性は卵巣に原始卵胞を蓄えて生まれてきます。これらは生まれた時点で約200万個ありますが,初経時には約30万個まで数を減らします1。この原始卵胞を成熟させた後に卵(卵子)として放出します。これが排卵です。排卵された卵が受精・着床すれば妊娠,受精しなければ生理が来る,というのが基本的な仕組みです。
しかし,すべての原始卵胞が成熟するわけではなく,99%以上がアポトーシス(プログラム細胞死)によって消滅します。例えば,30歳で第一子を妊娠した場合,それまでに約180回の生理を経験している計算になります。生涯で成熟する卵胞はわずか数百個と言われており,妊娠を望む年齢に達した頃には,すでに多くの卵胞が失われていると考えると,その消費の速さに驚かされます。
ピル服用による卵子温存
25歳の時,私は今度は将来的に妊娠をするためにピルを飲み始めました。理由は,卵胞の無駄な消費を抑え,卵の数を温存するためです。
この決断の背景には,父が産婦人科医と交流があり,ピルによる卵子温存の情報を教えてくれたこと,そして友人とのライフスタイルの違いに焦りを感じていたことがありました。
当時の私は大学院在学中で博士課程への進学を決めたばかり。いつ社会に出られるのか,結婚のタイミングも見えず,将来のライフプランを立てることが難しい状況でした。一方で,中高時代の友人たちはすでに就職し,SNSにはリッチな海外旅行や素敵なレストランでの食事の写真があふれていました。対して,私は研究室での飲み会が日常。コンビニでお酒やつまみを調達することばかりでしたし,行っても高架下にある雑多な飲み屋でした(居心地がよくて大好きですが)。土日も研究室にいることが当たり前。そんな状況に私だけ人生が遅れていると焦りを感じていたことも,ピルを服用する大きな動機になりました。
また,生物学的に考えると,卵胞の成熟やアポトーシス,子宮内膜の肥厚・排出には大きなエネルギーが必要です。それが毎月繰り返されることを考えると,「もったいない」と思いました。さらに,子宮内膜が正しく排出されないことで子宮内膜症を引き起こすリスクを考え,ピルの服用が有効な選択肢だと判断しました。
その後,妊娠を希望した際にすぐに妊娠できたことを考えると(もちろん複合的にラッキーが重なったわけですが),25歳の自分の判断は正しかったと感じています。
ピルの種類と副効用

初めは体内のホルモンリズムに近づいとされる三相性ピル「トリキュラー28」を服用していましたが,後に一相性ピル「マーベロン28」に変更しました。どちらも,21日間ホルモンを含む錠剤を飲み,その後7日間プラセボ錠を飲みます。一相性ピルのメリットは,出血日の調整がしやすいこと,ニキビがほとんどできなくなること,出血量の減少,PMSの緩和などが挙げられます。
また,「ピルを飲むと太る」という噂についても,科学的に因果関係は証明されていません。私自身もピルの服用によって体重が増えることはありませんでした。
私にとって,ピル服用のメリットは非常に大きなものでした。避妊,PMS治療,子宮内膜症の予防,ニキビ治療,そして将来の妊娠のための卵子温存。これらすべてがピルを服用する理由であり,避妊目的だけでなく,生涯を通じた健康管理のためにピルを活用する女性が増えることを願っています。
おわりに
私の体験はあくまで一例であり,すべての人に当てはまるわけではありません。しかし,ピルに関する正しい知識を持ち,自身のライフスタイルや体調に合った選択をすることで,より豊かで健康的な生活を送ることができるでしょう。
この記事が,ピルに関心を持つ方々の選択の参考になれば幸いです。







Leave a Reply