親になると,毎日が想定外の連続。最初は戸惑っていたはずの出来事も,気づけば「まぁ,これくらいなら大丈夫」と思えるようになるから不思議です。
私の場合,それに拍車をかけたのがドイツでの子育てでした。自分の「常識」が通用しない場面の連続に,最初は戸惑い,驚き,心がザワザワしました。それでも次第に,ドイツの保育園のあり方や考え方に触れるうちに,ゆるやかに,でも確実に,自分自身の子育て観が変わっていったのです。
この記事では,そんな私がドイツの保育園で経験したカルチャーショックの数々をご紹介します。
目次
落ちたおしゃぶり?ジーンズでサッと払って終了!
娘が0歳の頃から通っていた保育園。ある日,園庭に迎えに行くと,砂場でおしゃぶりをくわえながら遊んでいました。ふと,口からおしゃぶりが落ち,砂まみれに。私が反射的に「どうするんだろう」と固まっていると,先生は何の迷いもなく,それを拾い,自分のジーンズで軽く砂を払い,そのまま娘の口に戻したのです。
「え,そこ洗わないの!? 」ーー日本では考えられない光景に思わずギョッとしましたが,それでも娘は元気そのもの。ああ,これがこの国の“普通”なんだなと実感し,「免疫つくし,まぁいっか」と腹を括った瞬間でした。
チョコレートデビューは,まさかの保育園
ドイツの保育園では,誰かの誕生日になると,その子の親がケーキやマフィン,アイスなどを持ち寄り,クラス全体でお祝いする習慣があります。
「チョコレートは,子どもが興味を持ってからでいいかな。私たちがチョコの存在を教えなければ娘は知らないはずだから,食べ出すのはたぶん3歳くらいかな…」と思っていた私。しかしある日,1歳半の娘を幼児クラス(1歳半ー3歳が所属)に迎えに行くと,先生がにこやかに「今日は〇〇ちゃんの誕生日でした。娘ちゃん,チョコレートケーキをおいしそうに食べていましたよ!」と。
そう,気づけばチョコレートデビューも“まぁいっか”の一コマになっていたのです。
逆に驚き! 日本の保育園,なんて丁寧なの…!
一時帰国中,日本の保育園に体験入園した時のこと。入園前面談では,これまでに食べたことのある食材を細かくチェック。「まだお家で食べたことのない食材は給食で出せません」と言われ,その丁寧さに驚かされました。
一方ドイツでは,特別なアレルギー申告がない限り,給食の食材チェックはありません。ピーナッツなどの強烈なアレルギー反応を起こしかねないアレルゲンは除かれますが,「食べてみて反応が出たら対応する」という合理的なスタンス。
そしてドイツでは,宗教的な理由で食べられないものや家庭の方針でベジタリアンの子への対応が,手厚い印象があります(移民が多かったり,スペシャルミールを必要とする人数が多いため)。
どちらが良い悪いではなく,その違いに,文化の根っこの部分を垣間見た気がしました。
ズボンは後ろ前?大事なのは“自分でできた”という経験
2歳の息子を迎えに行くと,ズボンを後ろ前に履いていることが日常茶飯事。靴下も,滑り止めが足の甲にくる向きで履いていたりします。

最初は「直してあげたい」と思いましたが,保育園の方針は明確でした。「自分で着られた」という成功体験が,正しい向きよりも大切なのです。
以来,我が家でもその方針を採用。「Bitte helfen!(手伝って!)」と息子が言ったときだけ補助し,そうでない時は間違ったままでも見守るように。
その後,おむつ替えのついでに,そっとズボンの向きを直すのが私の日課になりました。
毎日泥だらけ,食べこぼしのシミだらけで帰ってくる
娘も息子も,毎日とにかく汚れて帰ってきます。
保育園の園庭は,土,砂,木片で覆われ,ちょっとしたアドベンチャーパークのよう。岩を登り,砂の上に座り,木や縄でできた遊具で遊びまわる子どもたち。全身砂だらけで帰ってくるのも当然です。

さらに食事も,なるべく自分で食べさせる方針なので,シャツには食べこぼしのシミが毎日新たに追加されていきます。

最初こそ驚いていた私も,今ではGallseife(ドイツの石鹸)での予洗いがルーティンに。「汚れることを気にせず,思いきり遊べるのなんて,あと何年?」そう思うと,「好きなだけ遊んでおいで」と心から思えるようになりました。
ちなみに体験入園させた日本の保育園では,外で遊んでも,時間や活動ごとに着替えるため,娘の服がほとんど汚れていなかったことに驚きました。逆に,日本の保育士さんたちは,ドイツで培われた汚れることを気にしない娘のワイルドな遊び方に驚いたそうです。これもまた,文化の違いですね。
おわりに ー「まぁいっか」が育てた私の子育て観
もともと自分では潔癖気味だと思っていた私。けれど,夫や子どもたち,そしてドイツの保育園に揉まれていくうちに,だいぶ寛容になりました。
日本での常識が,私の常識が,ドイツでは通用しない。そんな状況の中で,あれこれ悩んでいても仕方がないと,次第に「まぁいっか」と思えるようになりました。
今では,この経験そのものが,私にとって何よりの財産です。子どもたちだけでなく,私自身もまた,異文化の中で育てられているのだと思います。







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